私たち宿屋はゲストに何を提案できるのか。

Guest House KURA

2020年02月29日 21:54

もう彼らがチェックアウトしてからしばらく経ってしまったけれど。

スペインからのゲストが1泊だけ蔵に滞在してくれた時のこと。前日までは長野の1166 backpackers さんに滞在していて、 ナノグラフィカ を訪れたりそれはそれはいい時間を過ごした、と彼らは話してくれました。

彼らの訪れた場所の表現の仕方なんかを聞いていると、彼らの考え方がとても素敵だということにすぐ気づきます。
彼らが旅の間に見ているのは表面的なものだけではなく、その更に先も想像して楽しんでいる、そんな感じがしました。

そんな彼らが、須坂に来てくれた時、こちらで案内をするより先に、ネットで行ってみたいところを見つけた、と話してくれました。

それが、須坂が誇る「能登忠」さんだったのです。
能登忠さんは、須坂にある由緒正しい懐石が食べられる割烹です。

彼らはまずネットの写真を見て、良さそうと思ったそう。
でも、普段ゲストハウス蔵で用意している周辺飲食店マップには、能登忠さんは載せていなかったのです。
いろいろな理由がありますが、まずは蔵は1人旅の人が多いということ。そして、なかなか事前に予約をしておくというのが難しいということ。そして、なによりお値段も普段紹介しているところよりは、もちろんお高くなってしまうということも、きっと私の心のどこかにあったと思います。でも、高いかどうかは、私が決めることではないし、そもそも「高い」というのは、値段そのものので判断することではなく、それだけの価値が自分にとってあるかということ。

案の定、私が「ちょっと他のお店よりお値段が・・・」と話すと、彼らはすぐに「値段の話をしているんじゃない。」と一喝。
ということで、以前能登忠の女将さんが教えてくれた「能登忠」という場所について、どういうところだったのか、どんな時に利用されている場所なのか、女将さんがお客様に伝えていっている大事な日本の伝統文化の話なんかを彼らにしました。そしたら、彼らは、ぜひともそこで食事がしたい!と言ってくれたのです。

能登忠さんに相談し、翌日のお昼に伺うことに。

能登忠の旦那さんも、女将さんも、そして英語で一生懸命対応してくださった息子さんも、みなさん心からのおもてなし、ってやつを彼らにしてくださったのでしょう。

お昼を食べて帰ってきた彼らは、それはそれはもう感動していました。
「一つ一つの料理を食べているとき、まるでシェフが語り掛けてくるようだ」とか、「この小さな食材にシェフがどれだけ試行錯誤してきたかを想った」とか、本当に一つ一つの食事を楽しんできてくれたんだと感じました。
これからは蔵のゲストにも、この価値をちゃんと説明し、ぜひここで食事をするように伝えるべきだ、と彼らに言われました。

はい。
おっしゃる通りです。
確かに、能登忠さんのようなところでできる体験を京都や東京でしようと思ったら、いくらになるかわからないし(また値段の話をしてしまうけれど)、誰かの紹介とかでもないと怖くて入れない。私が例えばフランスに旅行をしたら、一度はちゃんと対価を払ってでも、「フランスのコース料理」を食べてみたい、と思うものだ。でも、それこそネットや旅行雑誌に載っている情報だけでは、信用ならない。地元の人のお墨付きがあって、その成り立ちやどういう場所かも含めて説明を受けたうえで、そんな体験ができるならぜひ!と思うのも当然だ。

「宿でゲストを迎える」

この仕事は、本当に面白い仕事。何年やっても、日々勉強。
一人一人のゲストに、私たち宿屋はどんな提案ができるか、そして、どう提案できるか。たった1泊の滞在が、もしかしたら、一生彼らの旅の思い出に残るかもしれない。その為に我々宿屋は日々ここで暮らす中で提示できるカードをストックしていく。いつ何時、そのカードをそのゲストに、そっと渡せるように。

写真はゲストと能登忠の旦那さんと。
能登忠さん、貴重な体験をありがとうございました!




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Guest House KURA(ゲストハウス蔵)
cheap and budget hostel in Suzaka, Nagano
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