私は今までどんな旅をしてきただろう?
このゲストハウスを開いてから、何度も自分の旅を振り返りました。
でも、私は若い時、あまりいい「旅」をしてこなかった。
よく、ゲストに「バックパッカーだったんですか?」と聞かれる。
きっとそういうゲストハウスオーナーは多いんだと思う。
世界中を、何十か国と旅してきた旅人が、ゲストハウスを始めるというのは
私もよく聞く話だ。
でも、実は私はバックパッカーでもなかったし、
何十か国と旅をしたことがあったわけでもないし、
一人旅が大好きだったわけでもない。
ゲストハウスをやろう、と決める前、
私は国内でゲストハウスに泊まったこともなかった。
海外旅行をした時には、安いから、という理由で
ユース(ユースホステル)や、いわゆるゲストハウスっぽいところに
泊まったことはあったけれど。
じゃぁ、なんでゲストハウスを?
今日はその話をしたかったわけではないので、
それは、泊まりに来た時に飲みながらゆっくり話すとして。
そう、今日は『旅』について。
私がゲストハウスを始める前にしていた「旅」と、
ここに来るゲストたちがしている「旅」は、とても同じとは言えない。
ここでゲストハウスを始めてから、
あぁ、こんな風に旅をしてみたい。
そう強く思うようになった。
日本では、旅行に行くと、「おみやげ」を買って帰ってくる文化って、ありますよね。
旅行に行った人が、家族や友達、会社の人におみやげを買って帰る。
ときどき、おみやげ買って帰るのが嫌だから、会社の人たちにはこの旅行は内緒なんです。
なんて日本人ゲストもいます笑
でも、ここに来るバックパッカーたちは、あまりおみやげを買っていないかもしれない。
我々日本人ほどは。
もちろん、家族や恋人に、なにかちょっといいもの、を買って帰るゲストはいます。
でも、でも。
おみやげを買って帰らないゲストが、国から持ってきているものがあるんです。
それは、ほんのちょっとした国のもの。
国旗の入ったキーホルダーだったり、キャンディーだったり、文房具だったり。
簡単にバックパックに入るような手軽なもの。
彼らは、そういったものをバックパックに詰めて旅をしている。
そして、どこかでちょっと出会った現地の人だったり、
お世話になった宿の人にだったり、
旅先で出会った人たちに、このちょっとしたものをプレゼントしてくれるのだ。
おみやげを買って帰るのではなく、おみやげを「持ってくる」。
それって、実はすごいなぁと思うんです。
だって、旅に出る前から、彼らは旅で「誰かに出会う」ことを前提としている。
こういうちょっとしたものは、別に彼らは日本にいる友達にあげるために持ってきているわけじゃないんです。
旅先で偶然出会うであろう、誰かのために。
私はこのゲストハウスを始めるまで、そんなことを考えたことがなかった。
泊まる宿の人にお世話になるかもしれないな。
旅先で出会う誰かに、日本のものをあげたいって場面があるかもしれないな。
そう思って、日本のちょっとした何か、を持って旅したことはなかった。
これまで、多くのゲストがこの宿に、ちょっとしたものを置いていってくれた。
そして、ここで出会った地元のこどもにもプレゼントしてくれるゲストがいたり、
昨日行ったあのお店のマスターにお世話になったから、これを渡したいと言われたことがあったり。
今日まで3連泊中のニュージーランドからのゲスト2名。Teenager. (ティーンエイジャー)
彼らもまた、こんな素敵なプレゼントをくれた。
これらはマオリ伝統のデザインで、それぞれちゃんと意味があると説明してくれた。
彼らはどうしてこれを持って旅をしようと思ったのだろう。
そして、「これをどうぞ。」と言ってくれた時、素直にうれしかった。
どう、そのうれしさを表現したらいいのか、戸惑ったけれど。
でも、うれしかった。
そして、いつも考える。
自分が今度旅する時には、何を持っていこうかなぁと。
今のところ、いい案は浮かんでいない。
そして、今晩、彼らとラウンジで話をした。
彼らのうち、一人は空手を習っているそうだ。
日本語こそ話せないが、おそらく日本文化にも興味があるのだろう。
話していても「はい。はい。」と、とても丁寧に返事をする。
そんな彼らから怒涛のように溢れ出た質問。
「日本人の平均的な給料は?」
「家賃・生活費はいくらくらい?」
「日本人は働きすぎるって本当?」
「須坂の人口はどのくらい?」
「須坂の面積は?」
「人口は減っているんでしょ?」
「今は核家族が多いの?」
「日本での結婚って、家族同士のこと?それとも本人同士の問題?」
もっともっとちゃんと話したかった。
もっともっとちゃんと説明したかった。
でも、英語力がいつも足りないと猛省する。
そのくせ、勉強していない自分。
だめだ。。。
ただ観光名所を巡るだけの旅じゃない。
ここへ行って、これを食べて、
あ、そうだ、ここもガイドブックに載ってたな。
そんな旅じゃない。
彼らはその土地へ行き、
そこに住む人に出会い、
その人たちがどんな風に暮らしているのか、
どう考えているのか。
そんなことを知りながら、旅をする。
「世界でもトップクラスの先進国ニッポン」
彼らが思い描いていた日本の生活と、
私が答えたフツーの日本人の暮らしと、
そのあまりの違いに、彼らは驚きを隠せない様子でいた。
本当の当たり前の生活、なんて
やっぱりそこに行ってみなければわからない。
こうして、旅先での人々の暮らしが聞けるような旅って
いいなぁと思う。
10代のころから、そんな旅をしている彼らは
豊かだなぁと思う。
さて、来年の6月はどこへ行こうかしら。
Guest House KURA(ゲストハウス蔵)
cheap and budget hostel in Suzaka, Nagano
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